珈琲店タレーランの事件簿シリーズ(1~7巻)を読んだよ

 読書が好きで、ジャンルは軽いミステリー要素があるものが特に好みで、コーヒーも自分で淹れて動画にするぐらいに好き。好きなものと好きなものが合わさった、自分に向けられて執筆されたのではと錯覚さえしそうな小説、それが「珈琲店タレーランの事件簿」だった。

 この小説を最初に見つけたのは、かれこれ10年ほど前になります。当時「ビブリア古書堂の事件手帖」がブームとなり書店で多く見かける状態で、自分も漏れなくこのシリーズにハマり愛読しておりました。ミステリー要素と古書をかけ合わせたような内容で、これをきっかけとしてか、ミステリー要素となにかをかけ合わせたような小説が同時期にいくつもでていたように思います。ミステリーと時計屋とか、ミステリーとディナーとか、ミステリーと数学とか。そんな中で見つけたのが、ミステリーとコーヒーという組み合わせの「珈琲店タレーランの事件簿」。当時まだ自分で豆を挽くといったことまでしていませんでしたが、コーヒーには興味をいだいていたので、自然と手に取っていました。最初のきっかけは本当に、好きなものと好きなものが要素として含まれているからそんなに間違いはなかろう、といった程度のものでした。

 1巻目の「珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を」を読んだとき、最初の印象としては「ビブリア古書堂の事件手帖の二番煎じ」というのが正直な感想でした。執筆時期の詳細まで追ったわけではなく、自分の読んだ順番が「ビブリア古書堂の事件手帖」が先だったということと、人気の大きさからこのような印象を持ったのだと思います。コーヒーの要素は自分が思っていた以上に散りばめられており、一種の雑学本のような感覚で楽しんでいましたが、ミステリー要素としての印象はそこまでインパクトがないという個人的な評価です。あとがきにもあったのですが、この作品のもととなるものは「ミステリー要素が弱い」という評価を受けており、そこからさらに手直ししてミステリー要素を膨らませたうえで出版されているとのこと。おそらく、他のミステリー作品をそれほど読んでおらず、比較対象が無いような状態で読めば、ミステリーとコーヒーというのを主軸に、登場人物の人間関係や京都を舞台とした背景設定など他の要素を含めてバランスのとれたとても読みやすい小説として、かなり好印象で受け止めていたと思います。

 1巻目で自分にとってはそれほど高評価ではなかったわけですが、コーヒーに加えて、京都の舞台を前提とした、自身の知識欲を満たす要素がふんだんにあったこと、1巻目で完全にひと区切りついているような感じなのに続きがあるとはどういうことか、展開が知りたいという欲求が湧いたので、当時発売されていた巻数すべてを読み進めていました。巻数が進むに連れてミステリー要素はより深くなり、登場人物たちへの愛着も湧いて、当時3巻までしかでていなかったと思うのですが、3巻を読み終わった時点で熱心なファンとなっていました。

 環境の変化などによって小説を読む機会が減り、続編がでていることにも気づかぬうちに数年が経ちました。ふと何かの拍子に小説の話題となり、そういえば当時読んでたものって続編出てるのかなと思い出した本の中に「珈琲店タレーランの事件簿」があった。改めて調べてみると7巻まで出ており、電子書籍でまとめて購入。時間を見つけて徐々に読み進め、最近になってようやく7巻まで読み終わりました。全体を通して、コーヒーと京都縁の地に関する話題が多く、趣味の周辺知識を知るといった部分は非常に面白く読ませてもらったという印象です。深く細かい心情の描写といったものは少ないながらも、登場人物たちへの愛着はより深くなり、主要人物たちのその後がより気になる状態です。ミステリー要素については、私個人の感覚ではありますが、巻数を重ねるにつれ、読み応えのある内容になっており、惹きつけられるお話と感じ、こう言っては失礼かもしれませんが、著者自身の成長を見るような感覚になりました。そういう意味でも、次巻が楽しみでなりません。

 あとがきをみる限りだと8巻も出そうなので、今後の楽しみの1つとして、ゆっくり待とうと思います。あまり内容に踏み込まない書き方をしているのは、ネタバレ防止というのもありますが、さすがに7巻分という分量をまとめる自信がないというのが大きな理由になっています。とっちらかった内容になる未来しか見えない。。。

 コーヒーや京都の街並み、軽いミステリーがお好きという方であれば、十分に楽しめる小説だと思いますので、ぜひ読んでみてください。